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翻訳コラム

COLUMN

第25回ミラートランスレーション(その12:米国における取扱(日英翻訳))

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員 藤岡隆浩
シリーズ「特許法の国際比較」

1.概要

先ずは、米国における条約(PCTを含む)の位置づけを見てみましょう。たとえば日本では、特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による(特許法第26条)、と明確に規定されているので、条約であるPCTが直接的かつ優先的に適用されます。
しかしながら、条約の取り扱いは国毎に相違し、たとえば英国のように条約が直接的に適用されず、国内法を整備することによって条約を履行する国もあります。米国は、ケースバイケースで条約が取り扱われるようです(下記注参照)。
したがいまして、米国国内法(米国特許法)の内容を確認することが重要です。条約を履行するためには、条約の保護対象となっている外国人の取り扱いに関し、条約と実質的に同一の内容の規定を国内法に設ける方法と、条約よりも外国人を有利に取り扱う方法とがあります。

2.PCT46条と対応する米国特許法第375条

(1)PCT46条

Article 46(Incorrect Translation of the International Application)
If, because of an incorrect translation of the international application, the scope of any patent granted on that application exceeds the scope of the international application in its original language, the competent authorities of the Contracting State concerned may accordingly and retroactively limit the scope of the patent, and declare it null and void to the extent that its scope has exceeded the scope of the international application in its original language.

第四十六条(国際出願の正確でない翻訳:公定訳文PCT第67条)

国際出願が正確に翻訳されなかつたため、当該国際出願に基づいて与えられた特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる場合には、当該締約国の権限のある当局は、それに応じて特許の範囲を遡及して限定することができるものとし、特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。

(2)米国特許法第375条

35 U.S. Code § 375 – Patent issued on international application::Effect

(a) 略

(b) Where due to an incorrect translation the scope of a patent granted on an international application designating the United States, which was not originally filed in the English language, exceeds the scope of the international application in its original language, a court of competent jurisdiction may retroactively limit the scope of the patent, by declaring it unenforceable to the extent that it exceeds the scope of the international application in its original language.

(b) 最初に英語によってはなされていない、合衆国を指定国とする国際出願に基づいて付与された特許の範囲が、不正確な翻訳のために、原語による国際出願の範囲を超えているときは、管轄権を有する裁判所は、当該特許が原語による国際出願の範囲を超えている範囲に関してその強制不能を宣言することにより、特許範囲を遡及して制限することができる。

出典(特許庁ウェブサイト)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm#png

3.対比

強制不能が「権利行使不能」を意図していると考えれば、米国特許法第375条は、PCT46条を米国の国内制度に沿って忠実に履行できるように立法されていることが分かります。無効(null and void)に関しての規定は見当たりませんが、条約の履行上は問題ないと考えられます。
PCT46において、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」との規定は、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超えない場合には、特許が無効であることを宣言できない。」として外国人を保護する規定です。したがいまして、米国特許法第375条は、PCT46条よりも保護が厚くなっているとの解釈は可能ですが、PCT46条よりも保護に欠けるとの解釈は難しいと考えられるからです。

参考

注1.国際法における一元論と二元論
http://en.wikipedia.org/wiki/Monism_and_dualism_in_international_law

注2.国際法の取り扱いに関する判例(Medellín v. Texas, 552 U.S. 491 (2008))
http://en.wikipedia.org/wiki/Medell%C3%ADn_v._Texas

藤岡隆浩

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員
日本弁理士会 欧州部長および国際政策研究部長を歴任