翻訳コラム

COLUMN

第447回#私のお気に入り 三重母音

2019.09.18
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

今日は発音の話でもしようかと思います。

中国語の発音、難しいものはいくつもありますが、僕は三重母音も結構バカにできないなと感じています。特に「-iou」と「-uei」ですね。

三重母音は全部で4つあります。「-iao (yao)」「iou (you)」「-uai (wai)」「uei (wei)」です。それぞれ、前に子音がつかない時はカッコ内のように綴りますが、発音が特に大きく変わるようなことはありません。

でも、見た目が変わりますので、ちょっと注意です。「yao」は「ヤオ」ではなく「ィアオ」というような意識で発音したいものです。もちろん前に子音がついても同様で、例えば「qiao」は「チャオ」ではなく「チアオ」という意識で発音してほしいですね。生徒さんたちの発音を聞いていると、この辺がおろそかになっている人が多いように感じます。

「wai」も「ワイ」ではなく「ゥワイ」という意識が必要ではないかなと感じます。「ゥアイ」では足りません(笑)。というのは、日本人の「ウ」は浅くて平べったいからです。次が「ア」ではなく「ワ」だったら、日本人でもさすがに少しは唇を丸めて発音するので、「ゥワイ」と思ったほうがいいと思います。子音がついても同じこと。「kuai」なら「クアイ」ではなく「クワイ」と思って発音してみるといいかと。

さて、問題は「iou (you)」と「uei (wei)」です。まず子音がつかない場合は、上記「yao」や「wai」と同様の意識が必要だと思います。

つまり、「you」は「ヨウ」ではなく「ィオウ」、「wei」は、カタカナでは表せませんが、「ウェイ」の「ウ」の時に唇をしっかり丸める癖をつけたいですね。

では、子音がつく場合は?

ご存知の通り、この2つの三重母音は、前に子音がつく場合も綴りが変わりますね。「iou」は「-iu」、「uei」は「-ui」になります。

結構忘れている人も多いかもしれませんが、この「-iu」と「-ui」は二重母音ではなく三重母音なのです。

つまり「qiu」は「チウ」ではありません。「チョウ」でもありません。本当は「q+iou」なので「チオウ」だと思って発音するくらいが丁度いいと思います。

「-ui」も同じです。「kui」は「クイ」ではありませんね。「コエイ」というような意識が必要かと思います。「クエイ」ではなく「コエイ」とすべきだと思うのは、やはり日本人の「ク」は浅くて平べったいからです(苦笑)。この日本人の「ク」のままだと「クイ」を「クエイ」としたところで、もっと通じなくなるだけです。「u」は唇を丸め、舌を下げて口の中を広くすることが絶対に必要なので、たとえ一瞬のことではあっても、しっかり唇を丸めて舌を下げてください。そのためには「ウ」ではなく「オ」と思ったほうがいいでしょう。

「そのとおり!」という時に使う“对 duì”という言葉がありますね。あれも「-ui」ですから本当は三重母音の「uei」です。だから「トゥイ」ではなく「トエイ」というような意識が必要かと思います。

でもね~。色々書きましたが、日本語って本当に口を動かさなくて話せる(?)言語なので、シャイで声の小さな学生に「コエイ」だよと教えても、全然唇が動かないんですよ~。逆に「日本語ってスゲェ」と思います。唇もアゴもほとんど動かさなくても「コエイ」って言えるんですから!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本