翻訳コラム

COLUMN

第444回袋いりますか

2019.08.28
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日、台湾でコンビニに行きました。台湾にも日本のコンビニがたくさんありますね。もちろん台湾資本のコンビニもたくさんあります。どちらも日本にあるコンビニとほぼ同じようなサービスを受けられますので、とても便利ですね。

ただ、少し違うのは、台湾のコンビニはレジ袋が有料だということです。なのでレジの店員が必ず客に次のように尋ねてきます。

要袋子吗?
Yào dàizi ma ?
袋いりますか?

ですので、答えなければなりませんね。みなさんはどう答えますか?

先日台湾のコンビニに行ったとき、僕の前に並んでいた客は台湾在住らしい日本人でした。彼はこんなふうに答えていました。

我有袋子。
Wŏ yŏu dàizi.
袋持ってます。

僕はちょっと違和感を覚えました。え?そう答えるの?って感じ。

案の定、店員は勘違いして袋を用意して、客が“不不不!”と言って慌てるというようなことになっていました。

たぶん、店員にはこんなふうに聞こえてしまったのではないかと思います。

我要袋子。
Wŏ yào dàizi.
袋ほしいです。

ふつう“要袋子吗?”と尋ねられたら“要(袋子)”とか“不要(袋子)”とか、まぁある意味素直に答えるのが中国語だと思うのですが、そこをふつうに答えず「袋あります」と答え、相手に「だから袋いらないんだな」と想像させるというのは、なんというかちょっとひねっているなぁと思いました。

でも、その後日本でスーパーに入ったときです。そのスーパーはレジ袋は無料だったのですが、エコのため客にレジ袋を使わないよう呼びかけているようでした。そしてレジの店員が「レジ袋いりますか?」と客に尋ねるようにしていたようです。そして、僕のあとに並んでいた客は、店員の「レジ袋いりますか?」との問いに、こう答えていました。

「あ、袋、あります。」

あ~、なるほど。日本だとこう答えるのがまぁふつうなんでしょうね。

確かに、日本語って否定形で答えるとちょっときつく聞こえたりする傾向があるかもしれません。「レジ袋いりますか?」との問いに「いりません」と答えるのは、まぁ別に大丈夫だとは思うのですが、はっきり否定せず相手にわかってもらうのが日本風なんでしょうね。だから「いりません」ではなく「大丈夫です」とか「袋持ってます」と答える。そうすると相手は「ああ、袋いらないんだな」と察してくれる。これが日本文化なんですね。う~む、分かりにくい人たちだ(笑)。

上で述べた台湾在住らしき日本人も、おそらくはまだ中国語の文化に染まっていないのでしょう。だから“我有袋子”と答えたのでしょうが、中国語の文化の中ではそういう「察してよ」文化はないと思うので、店員さんは“我有袋子”と言われてもピンと来ず、“我要袋子”と言ったのかな?と思ってしまったのだろうと思います。

我々日本の文化というのは、奥ゆかしい素敵な文化ではありますが、外国語をやる上では結構やっかいな文化ではありますね。中国語を話す時は「相手に察することを求めてしまっていないかな?」と常に自問自答したほうがいいかもしれません(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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